IT事例に役立つコラム(仮)

2014.06.06

苦言を生かして事例のリアリティを高める

取材先では、せっかくの取材ということでリップサービスに努めてくれることも多いでしょう。とはいえ、予定調和的につくられた「いいことだらけ」の事例は、リアリティのないものになりがちです。「苦言」「不満点」にまで踏み込んだ取材を行い、きちっとフォローすることが大切です。

耳障りな話も積極的に聞き出したい

「導入事例ならではの持ち味を生かそう」でも説明したように、導入事例は「ユーザーの生の声」を取り入れることでリアリティを高め、読者(潜在ユーザー)への説得力を増すことができます。逆に言えば、リアリティの伴わない導入事例は読者へは響かないでしょう。最初からなにもかもがうまくいき、導入先は大喜びしているといったストーリーになってしまうと、仮にそれが事実だとしても、多くの読者はリアリティを感じないはずです。

では、どうすれば、ユーザーの生の声をうまく生かすことができるのでしょう? ひとつの方法としては、出席者に自社製品や自社のサポート体制について苦言を呈してもらいましょう。取材も後半に入れば、最初の緊張も解けて場も和んできますから、タイミングを見計らって不満や不便な点を述べてもらいましょう。「当社側の営業担当者も同席していますので、せっかくの機会ですから、ご不満やご意見についてもお伺いできますか…」と水を向けてください。

とはいえ、以後の話題が苦情中心で推移したり、本格的な糾弾の場になってしまったりしては、せっかくの取材が台無しです。未解決のままになっている大きなトラブルがなくて、発言者が自社製品や自社に対して好意を持っていることが前提となります。営業担当者に時間をとってもらい、最近の両社のリレーションについてリサーチしておくことが大切です。

トラブルも、書き方次第で訴求ポイントに

自社や導入製品に対する不満や問題点は、もちろんそのまま掲載することはできませんが、適度に取り入れることで、隠し味のような役割を果たしてくれます。仮に、プロジェクトの初期段階で大きなトラブルが発生したとしても、それを乗り越えて大きな成果を達成できたのであれば、メリハリのあるストーリーづくりが可能になるでしょう。

例えば、導入製品が本来持っていない機能を実現したいという要望を技術陣の工夫で解決したとか、導入製品の新機能を活用することで既存システムとの連携を実現させた、あるいは営業担当者のきめ細かな対応で先方の懸念や疑問点をていねいに解消していったという話は、事例をいきいきとさせるだけでなく、自社の持つ技術力やサポート力、営業力をアピールすることにもつながるはずです。

営業活動のアフターフォローにも

また、「取材」の一環として、先方の担当者から導入製品についての不満点や要望を引き出すことで、担当者同士の普段の会話からは見えてこない本音を拾い上げることができるかもしれません。優れた営業担当者は、製品の導入後もこまめなアフターフォローを行い、顧客インタビューの機会を設けて、自社製品の強み/弱みを把握し、リピート購入や新規顧客紹介につなげるといいます。事例取材の場を設けるということは、そうした活動を支援することにもつながります。

苦言も含めて導入製品について語ってもらうことで、製品の課題や問題点が見えてくるだけでなく、導入先にはあらためて導入製品の価値について考え、製品の魅力を再認識してもらうきっかけにもつながります。
自信をもって、製品の課題・問題点について語ってもらいましょう。