IT事例に役立つコラム(仮)

2014.02.10

5の巻「失敗のケースに学ぶ[1]~実績豊富な業者へ発注したはずが…」

A社は、ある特殊な業務を請け負う業種に特化したグループウェアを制作しているベンダで、その開発には独特の知識やノウハウを必要としているため、ライバルとなる企業が少なく、これまで着実に業績を伸ばしてきました。

そしてこのほど同社では、ビジネスの成長にともなって新規の問い合わせが増えてきたこともあり、営業ツールの拡充を目指して導入事例を制作することにしました。

 

「導入事例なら任せてください!」、その言葉を信用したが

そこで担当者は「IT、導入事例、制作」などのキーワードでインターネットを検索。数ある制作会社の中からB社を選び、とりあえず話を聞いてみることにしました。

B社の営業は手慣れたもので、自社の持つ豊富な実績を紹介した上、制作の流れをわかりやすく説明してくれたため、導入事例を初めて制作するA社の担当者も一安心。聞けばIT系の実績はそこそこあるようですし、金額も手ごろ。最終的にはB社の営業の「導入事例はウチの得意分野です、任せてください!」という言葉に後押しされ、B社に制作を発注することにしました。

 

ITライターにも分野の得意・不得意がある

お客様との調整も問題なく進み、いよいよ取材の日がやってきました。ところが、B社から派遣されてきたライターはとんちんかんな質問を繰り返すばかりで、お客様の話も理解しているようには見えません。迷走する取材に、先方の重役も明らかに機嫌が悪くなっています。A社の担当者はハラハラしながらどうにか場を取り繕い、取材を終えました。

そして1週間後、ライターから上がってきた原稿を見て担当者は頭を抱えました。ピントがずれている上、先方の話した言葉がほぼそのまま載っているだけで、A社としてのメッセージがほとんど含まれていなかったからです。このままでは使うに耐えないということで、結局は担当者が全面的に原稿を書き直すことになりました。つまり、B社にお金を払って制作を依頼した意味がなくなってしまったのです。

その後、B社の営業を問い詰めたところ、 件のライターはたしかに「ITに精通」しており、「事例制作の経験が豊富」でしたが、それはまったく違う分野の話。今回のように特殊な製品に対する理解は不十分な上、いつもは技術寄りの原稿を書くことが多かったため、質問も技術面に偏ってしまい、経営や業務の観点からの話を引き出すことができなかったのです。

 

【今回の教訓】

一言でITといってもその範囲は広く、例えばB to B向けの製品とB to C向けの製品の導入事例では、アピールすべきポイントが大きく変わります。つまり、「IT系の導入事例を数多く制作してきた」制作会社だからといって、あなたの会社の導入事例を必ず制作できるとは限らないのです。
導入事例の制作会社の選定にあたっては、ビジネスパートナーを選ぶときと同様に、実績などを慎重にチェックする必要があるしょう。