IT事例に役立つコラム(仮)

2014.10.29

6の巻「失敗のケースに学ぶ[2]~『聞きたいこと』と『言いたいこと』は必ずしも一致しない」

ソフトウェア開発会社のC社では、新たに開発した基幹業務パッケージが中堅中小企業に好評で、売り上げを大きく伸ばしています。同社では、さらなる顧客獲得に向けて導入事例を制作することになりました。

とはいえ、C社は導入事例制作の経験がなく、また専任の担当者を置く余裕もないことから、取引先に紹介してもらった事例制作会社に全面的に協力してもらうことになりました。

C社の事例制作担当者は、普段の業務が忙しく十分な時間を割くことができませんでしたが、経験豊富な制作会社の支援を受けて、顧客企業の選定から依頼までは、スムーズに進めることができました。

 

名のある企業に登場してもらえることになったが…

取材先となったD社は、特殊な工具を開発しているメーカーで、企業規模こそ小さいものの、その分野では世界的に名の知れた企業です。ビジネス雑誌にも、元気な企業として頻繁に取り上げられるなど話題性もあり、事例に登場してもらうには格好の企業です。

D社が、基幹業務システムにC社パッケージを採用した理由は、比較した海外製パッケージに比べて価格面で大きな差があったことと、中堅中小企業への導入実績が豊富で、日本の商習慣に合わせてカスタマイズが可能なことでした。取材では、そのあたりを中心に語ってもらえることになり、海外製パッケージとの違いをアピールできそうでした。

 

出席者が熱心に語ってくれたのは…

インタビューでは、C社パッケージが高機能かつ構築が容易で、運用開始後のトラブルもほとんどなかったということを、異口同音に語ってもらうことができました。

しかしながら、出席したエンジニアが特に熱心に語ったのは、いかにして苦労してカスタマイズを成功させたのかという話が中心でした。
実は、導入時に海外製パッケージと比較した際に、C社パッケージに備わっていない機能が問題になったのですが、D社の技術者がその機能を手組みでつくり、それをうまく連携させることに成功したのです。

カスタマイズ機能は、C社パッケージにとって確かにウリのひとつではあるのですが、D社の取り組みはあまり一般受けする話ではありません。
C社パッケージの販売数をさらに伸ばしていくには、海外製パッケージに比べて低コストで導入できることや、導入・運用のしやすさをもっとアピールしたいところなのですが、インタビューでは技術的な話題が中心になり、そうしたメリットについてはほとんど触れてもらうことができなかったのです。

 

【今回の教訓】

インタビューの出席者が話したいと考える内容は、制作側の意図と同じではありません。もちろん、インタビュー項目については事前に提出していますから、制作意図は伝わっているはずですが、何をどれだけ熱く語ってもらえるかは別問題です。

そのあたりをうまく引き出すのがインタビューのコツとなります。事例における出席者の会話部分の内容や表現は、制作会社を選定する際に大切なチェックポイントとなるでしょう。