IT事例に役立つコラム(仮)

2014.12.12

7の巻「失敗のケースに学ぶ[3]~期待した品質の導入事例がつくれなかった理由は…」

E社は、ITコンサルティングやソフトウェア販売などを提供している独立系のシステムインテグレータです。同社は、最近になって米国F社と代理店契約を締結。システム開発にF社のハードウェア製品を組み込む一方で、製品単独での販売にも力を入れることになり、その販売促進の一環として導入事例をつくることになりました。

ただ、E社はハードウェア製品の導入事例を制作した経験がないことから、F社の日本法人に連絡をとり、F社の導入事例を制作したことがある事例制作会社を紹介してもらい、制作を任せることになりました。

 

順調に滑りだしたインタビューだったが…

事例制作会社の取材スタッフと打ち合わせをしてみると、F社の事例制作の経験があるだけに、F社の各種製品について詳しく、頼りがいがありそうでした。取材の段取りも手際がよく、さっそくアパレルメーカーへの取材が決まり、日程の調整を行ってスムーズに取材当日を迎えました。

インタビューにはアパレルメーカーのIT部長と担当者が出席し、同社が抱えていたシステム上の課題や、F社製品の運用状況について詳しく説明してくれました。インタビューを担当したライターも、ツボを抑えた質問で回答を引き出し、取材は順調に進みました。

しかし、F社の製品を選んだ理由をお聞きすると、選定を行ったのは前任の部長と担当者とのことで、当時の状況はよく分からないということでした。また、ユーザ部門側からの出席者がいなかったため、業務上の効果や具体的な使い勝手について「ユーザの生の声」を聞き出すこともできませんでした。

 

一定レベル以上の品質で導入事例をつくるには

インタビューの出来不出来は事例制作の品質を左右しますが、それ以上に事前の調整や準備が大切であり、制作会社の力量が大きくものを言います。

もちろん、制作会社に丸投げしてしまうのではなく、担当者が主体的に準備を進めるべきですが、事例制作の経験がなければ、何をどうすればいいのか分からないことも多いでしょう。やはり、取材先選定から事前準備、取材、原稿制作までの各プロセスにおいて、的確なアドバイスをくれたり、見落としをチェックしてくれる制作会社側の支援が大きな支えとなります。

後から分かったことですが、F社の導入事例を担当している事例制作会社は複数あり、今回の制作会社はその一部を担当しているにすぎず、メインで担当している制作会社がつくったテンプレートに則って制作を行っているとのことでした。事例制作全般についてのスキルやノウハウを持っていなかったことが、取材の不首尾につながってしまったようです。

 

【今回の教訓】

インタビューのスキルやノウハウが、事例制作においてものをいうことは事実ですが、個人の属人性に頼っていては、一定レベル以上の事例を継続的に制作するのは困難です。

制作会社が過去に制作した導入事例を比べて、もし品質に波があるようなら、制作ノウハウやスキルが社内で共有されていない可能性があります。複数の事例で品質がそろっているかどうかは、制作会社選定のポイントのひとつになるでしょう。